作成者: 戸田鳥

トチノキ【小説】

郊外に越したばかりの加藤から、遊びに来いと誘われたので、酒を持って出かけた。 親戚の誰かから古い家を譲り受けたと聞いていたが、予想以上に大きな家であった。都会ではあり得ない庭の広さだ。 玄関でいくら呼...

竜宮【小説】

今年も海に行けぬまま夏が終わってしまった。休暇は残っているが、秋口の海など侘しいだけだ。 「それならいい店がある」 と言う橘に連れられて、さびれた商店街の路地裏に入る。狭い角を曲がった薄暗い通りにその...

絵本はいかが

自己出版のお知らせです。 今回、BCCKSで絵本をつくりました。 (画像クリックで商品ページへ飛びます) ) イラストは、拙著2作の表紙を描いていただいた“moccodow”こと永森木綿子さん。ほぼ全...

僕の金魚【小説】

  しらす干しのパックを瓶に空けていたら、小さなタコが混じっていた。 面白がるだろうかと、金魚に与えてみる。金魚はタコを受け取るとしげしげ見つめた。用心深く足を口にふくむと、あとは一気に頭ま...

戯曲のススメ

ひと昔前、芝居を観るのに凝ってた時期があり、戯曲を読むのが楽しくなったのはまたそれより後だった。 観たり読んだりするなかで、脳内に架空の舞台が建てられる。そのうち板の上を、架空の役者たちが飛び跳ねるよ...

おとしもの【童話】

道に財布が落ちていた。水色の布でできたがま口の財布。 お金が入ってるかな、と振ってみた。そしたらちゃりんちゃりん、ってお金のぶつかる音じゃなくって、 ちゃぷん、ちゃぷん、 って水が揺れてるみたいな音が...

予言【小説】

  「ひとつ予言しようか」 見下ろすと、白い鳩がこちらを見あげていた。 鳩は、いかにも物知りげに、流暢な日本語で、私に告げた。 「きみは生涯、孤独で過ごすことになる。だけどその代わりに、受け...

善意 【小説】

休日の夕刻、ソファでまどろんでいるとドアがノックされた。 居留守を使おうと目を閉じたが、ノックは激しくなるばかりだ。仕方なく起き上がってドアごしに返事をする。 「新聞代の集金です」 そういや月末だった...