カテゴリー: literary_work

蚊帳(かや)

蚊帳(かや)

 目の前に蚊帳が吊られている。畳二畳ほどの広さだ。中では白黒テレビが点いており、その明かりで中の様子が見えた。丸い食卓の、向かって左側に主人と思しき男が黒い着物を着て座っている。私に背を向けて座ってい...

トチノキ【小説】

郊外に越したばかりの加藤から、遊びに来いと誘われたので、酒を持って出かけた。 親戚の誰かから古い家を譲り受けたと聞いていたが、予想以上に大きな家であった。都会ではあり得ない庭の広さだ。 玄関でいくら呼...

金魚

例えば真白な紙を渡されて 「お好きに描きなさい」 などと言われたら私の右手は萎縮する また譜面を渡されて 「思うままに奏でなさい」 などと言われたら私の両手は硬直する 泣くほどのことじゃないから そこ...

Pieces of something ~scene#01~

――スラムの教会。若い神父が語る。席には数人しかおらず、誰も興味を示さない。 「私は彼が伝説であることを皆さんにお伝えしたいのです」 ――聴衆の無関心にめげるどころか、むしろ奮い立つように熱弁を振るう...