めまいのする閉じられた鉄の扉-2-imaginary number

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町は小さくて広いです。住民は小さくせまい土地に住んでいました。せまい町のまんなかには時計台のある広場があります。広場には横一列にブランコがならんでいました。すべてのブランコは海の方にしか動きません。そういう決まりです。住民はブランコにのり、海を眺めながら静かにおしゃべりをします。

広場から左手のほうへ歩いていくと、白い空気の林が見えてきます。林の近くには誰も住んでいません。町の人も近づきません。なぜなら、白い空気を吸うと、めまいがするからです。その先には鉄の扉がありました。カギはかけられていません。扉は閉じられています。

扉の前には2ひきの瑕疵猫が棲んでいました。白い瑕疵猫と黒い瑕疵猫です。2ひきの瑕疵猫は扉と林のあいだを走り回っていました。ぐるぐるです。走り回ると、空気が白くなります。白い空気は2ひきの瑕疵猫がつくっていました。

扉の向こうには「あちら」があると言われています。「あちら」は「あちら」です。町を囲む白い壁にある扉はひとつだけでした。鉄の扉には「2」と書かれています。他の数字があるのかはわかりません。町のえらい人たちは多くの扉は白い壁に消されたと信じていました。

白い空気のめまいを少しばかりでも吸ってしまえば、世界がまわります。ぐるぐるです。右と左と上と下がなくなり、その場に倒れこんでしまいます。とんでもなく、ぐるぐるです。そんな姿を見て、2ひきの瑕疵猫は笑います。笑い鳴き声は保安官に届く仕組みになっていました。保安官と部下たちは、目の玉がぐるぐる回り、地面の上で体が回っている人を助けに行きます。

ぐるぐるの人は町の広場に運ばれ、真っ赤なビー玉を飲まされたあと、ブランコに両手と両足をしばりつけられます。そして、部下たちは、めまいがなくなるまで、片方にしか動かないブランコを大きくゆさぶります。このやり方しかないのです。めまいは瑕疵猫の鳴き声が聞こえなくなるまで休みなく続けられます。昼も夜もです。

2ひきの瑕疵猫は美しい首を左に二回、右にも二回、かたむけて、やる気なさげに大きなあくびをします。あくびが、めまいの終わりの合図でした。そうして、また、2ひきの瑕疵猫は走り回ります。白い空気は、さらに白くなっていきます。「2」の扉は閉じられていました。開かれた扉を見た人はいません。扉の向こうにある「あちら」を見た人もいません。

 

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吉川 敦

吉川 敦

文章と音楽。灰色の脳細胞です。 Respective Colours *Organizer*

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