町に降る三角の雨粒-3-imaginary number

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海の水は飲めません。塩分が多すぎるからです。特に、十歳より下の子どもには毒になります。まちがえて飲んでしまうと大変です。ぶくぶくと太ってしまいます。太ると引力が大きくなり、地面から足を上げることができません。放っておくと、土の下に体が埋もれていきます。とても大変です。

少量でも海の水を口にした、十歳より下の子どもには治療をします。治療はかんたんです。子どもの手足を縄でしばり、町の真ん中にある、じょうぶな大木につるします。食事は与えられません。三日間、太陽の光と月の光に当てられ、血液の塩分や不純物が消えるまで放置されます。手首と足首にアザが残りますが、土に消えることと比べれば、それは小さなことです。

町には雨が降りません。人工的に雨を降らせます。七日に一度、太陽が海に沈むと同時に、すべてに屋根の置かれた台座から花火を飛ばすのです。空に向けられた多くの花火は夕暮れを明るくします。とても綺麗な景色です。花火の煙は雲となり、しばらくすると雨が落ちてきます。

雨粒は三角形です。傘に小さな穴が開くので、外には出られません。町の人たちは家のなかで長い夕食を楽しみます。長い長い夕食です。そして、窓に当たる、高い周波数の雨音を聞きながら眠りにつきます。雨は止むことがありません。そう、一晩中、雨は降り続けます。

朝は眩しいです。あちらこちらに虹ができていて、その眩しい光で町の人たちは目覚めます。とても美しい朝です。三角の雨は土に染みこんで、子どもたちが学校へ行く頃には、すっかり乾いています。石の歩道にも三角の雨粒は見当たりません。雨は町のあちらこちらにある井戸を満腹にしてくれます。どれもが底の見えない深い深い井戸です。

町では井戸の水を飲んでいます。とても美味しいです。すべての光を閉じこめるぐらい透き通っています。とてもとても綺麗な水です。

 

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yosh.ash
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