冒険者たちと忘れられそうな小石碑-5-imaginary number

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むかし、町には冒険者たちがいました。どれぐらい昔なのかはわかりません。冒険者たちは5人です。冒険者の目的は町の外へ向かうことでした。ふつうの人々は外の世界を考えません。小さな町ですが、それはそれで住む人にとって幸せな場所でした。ふつうではない物事を考える者を冒険者と呼ばれています。そして、5人は町の外を目指して町を後にしたのです。

ひとりは丸太の舟をつくり海の沖へと向かいました。海の彼方には大きな滝があると信じられています。誰も疑うものはいません。大きな滝の底をぬけようと冒険者は考えました。滝の底の向こうに何があるのかは誰も知りません。晴れた日の午後に、頑丈な鉄の潜水服を着た冒険者は海の彼方へ消えていったそうです。

ひとりは白い壁にある数字の書かれた扉を抜けました。どの数字なのかはわかりません。重い鉄の扉を開くまで51日かかりました。扉の向こうには「あちら」があります。冒険者が「あちら」へ進むと数時間ほどで扉は白い壁に溶けてしまったそうです。今では、その扉がどこにあったのかさえわかりません。

ひとりは白い壁を越えようと考えました。壁に黒い板とクギで階段をつくったのです。背負ったリュックに道具を入れ、一段をつくっては壁を上にのぼっていきました。冒険者は高い壁のてっぺんにたどりつくとロープをつたって「あちら」側へ。黒い板は太陽で腐り、クギの跡だけが今も残っています。

ひとりは気球にのって海の反対側へと飛んでいきました。太った冒険者は5日のあいだ何も食べずに体重を減らしたそうです。冒険者のチャンスは夜だけでした。海からの風に吹かれた気球は空高くのぼり空高くの「あちら」へと流れていきました。

ひとりは飛行器をつくりました。自転車を改造した人力の飛行器です。冒険者は盛り土で滑走路をつくりました。滑走路の先は海です。飛行器には2つの翼がついていました。冒険者は滑走路をおそろしいぐらいの速さでかけぬけると、そのまま空中に浮かび、空に向かって飛行器は飛んていったそうです。

5人の冒険者は誰ひとりとして町には戻ってきませんでした。5人がどのようになったのかは誰も知りません。冒険者たちの話は町の外れにある公園の端っこに小さな石碑があり、そこに書かれています。雑草におおわれた小さな石碑のことを町に住む人たちは忘れそうな小石碑と呼んでいました。公園では石碑の言葉を知らない子供たちが遊び回っています。もちろん、遊びに夢中な子供たちは小さな石のことなど気にもしていませんでした。

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