新年

 

深いふかい海の底で
白いクジラがふと目をさまし
身じろぎをして
あ、あんと大きなあくびをすると
新たな年のはじまりです

 

クジラのあくびは大きくながく
海は波だち地はふるえます
あくびをすっきりすませると
クジラはふたたび眠ります
古い一年を飲みこんで

 

あくびに飲まれたものたちは
次の一年 クジラのなかで
過ごさなければなりません
クジラが次にあくびをするとき
運良く口から出られるまで

 

運のなかったものたちは
いずれ姿かたちをかえて
小さなちいさなあぶくとなって
クジラのからだをすり抜けて
天をめざしてのぼるのです

 

ようそろ
ようそろ

 

海のあぶくはそれだから
終わった年の なごりなのです

 

 

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戸田鳥
「あることないこと、ありえないこと、あったかもしれないこと」を短い物語にしています。 AmazonとBCCKSにて電子書籍の公開・販売中(紙本も作ってます)。
戸田鳥

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